STORY

真のフラッグシップとなる
最高のホスピタリティを実現するために必要だった
大きな決断と挑戦

変えるか変えないのか、変えるならどこまで変えるのか — 長年やってきたお店の改装というのは意外と難しい。人はもともと変化を嫌うもの… さらに投資が大きく回収が大変なレストランへの再投資となれば、変えるリスクをとるより最低限に済ませたいというのが普通の考え方だと思う。

しかしこれまで何度も改装や移転を経験してきた自分の考え方はシンプルだ。「より良い店を作るためには、変えるべきものを変え、積極的に投資してもちゃんと回収する」 例えばティー・ワイ・ハーバーでは2005年・2015年と二度の大改装をしたが、コンセプトは変えないまま環境や使い勝手を改善して顧客満足を上げると同時に、増え続けるニーズにあわせて客席を増やし、売上増によって投資を回収してきた。

一方、2006年のオープン以来10年が経ったビーコンをどうするかは悩みだった。何しろ店を取り巻く環境が大きく変わった。赤身や熟成肉ブームが到来しオープン当初はあまり選択肢のなかったアメリカンステーキの店が次々とオープン、その間に自身の店舗設計に対する考え方も変われば会社組織も大きく成長した…. 居抜きで引き継いだ厨房をはじめ各所に痛みが見えてきた店をどうすべきか悩んだ結果、中途半端な「お化粧直し」では意味がない、莫大なコストはかかるが厨房も含めて根本的に見直し、やりたいことをすべて注ぎ込んだ店にしようと決意したのだ。

そしてフードコンセプトは大枠を変えず進化させる一方で、2つの重要なゴールを設定した。第1に、タイソンズの強みである人の力での差別化を目指し、顧客体験を重視してきた我々が考える最高のホスピタリティを実現する店であること。第2に、人が育つ仕組みを重視してきたこの数年の流れのなかで、成長したいと願うスタッフが目指す憧れの店を作ること。サービススタッフは新規採用をせず既存店からの自薦で条件をクリアした者だけにするなど、会社の成長に伴う「量と質」という永遠の課題のもとで、これまでのビーコンとは違う真のフラッグシップを作ることが大きなテーマになった。そこまで変える以上、変化の象徴としての店名変更は必然的だった。

「CRISTA」は英語の「CREST」の語源となったラテン語で本来は鳥のトサカの意だが、転じて「頂上」、あるいは紋章の最上部、王冠の上で輝くシンボルを意味する。日本語で言えば兜飾り、直江兼続の「愛」の字は有名だが、戦国武将が兜の上につけ命懸けの戦場で主張した自分のアイデンティティーそのものである。この店がタイソンズのなかで常にトップレストランとして輝きを放ちつづけ、会社のアイデンティティーであるとともにスタッフにとって憧れのお店となることは、長年親しんだビーコンの名前を捨ててまで変化を選んだ自分自身が成し遂げねばならない大きな挑戦である。タイソンズの歴史にまた新たな1ページが加わる。