STORY

場所から生まれる情景に惹かれ
紡がれてきた縁で叶った京都初店舗。

最初の店であるT.Y.HARBORが1997年に開業してから26年。京都・四条河原町でKactoを開くまで、タイソンズの店舗は品川や渋谷区・港区を中心としたエリアでのみ展開し、銀座などで出店の話が来ても遠いからと断ってしまっていた。理由はできるだけ近くでお店を見ていたいから。店舗の世界観を保ち、顧客をケアし、スタッフと語り合える環境をつくるにはそれが一番だと思っていたし、そうやってつくってきたのがタイソンズのビジネスだった。

そのため2019年に京都で最初に高瀬川沿いの物件の話が来たときも、当初はあまり気乗りがしなかった。ただ麹町のNo.4と同様、とりあえず見てみるかと思ってGoogleマップのストリートビューで確認したところ、あれ?このあたり良い場所かも…とアンテナが反応する。すぐ見に行ってみると、繁華街から近いのに落ち着いた街並みですっかり気に入ってしまった。

当時は東京五輪に伴う建築費の高騰のため3年ほど新規出店を控えていたタイミングで、東京以外の場所に拠点を持つこともリスク管理などの観点から必要かもしれないと考えていたこともあり、会社のある品川から新幹線で2時間の距離ならば管理もしやすいかと考えて出店を決めた。

ただ、東京の会社がいきなり出て行って簡単に商売できるような街でないことはわかっていたので、声をかけたのが店長の北出久雄。彼はIVY PLACEで副支配人をしたあと地元の京都に帰って店を開き、自分も京都に行くたびに寄っていたのだが、タイソンズを知り尽くしていた彼が店をやめてでも手伝ってくれると言ってくれたことが計画を後押しした。

そして出店話を進め、内装設計もかなり進めていたとき始まったのがコロナの感染拡大。20年3月の契約予定を1年延長したものの最終的に断わることになり、すっかりやる気になっていた自分は非常に落ち込んで…と思ったら、なんとすぐに20m先の物件の話が!オーナーとは当初の計画時にご挨拶していた関係で、幸運にも前の場所よりもっと良い場所を貸していただけることになり、団栗橋のたもとにKactoが生まれた。

どのような店をやるかについて紆余曲折あったが、代官山IVY PLACEで10年以上のあいだ朝食マーケットの伸びを実感してきて、京都も宿泊施設の急増に伴って朝食が熱くなりつつあるタイミングでもあり、得意分野のアメリカンをベースとし朝からオールデーで食べられて使いやすい、カフェレストランの業態とした。

内装は京都でもいくつかの物件を手掛けてきたKROWの長﨑健一さんにお願いし、古い町家にモダンな要素を入れながらも大人が落ち着ける空間に。メインの器は、ロサンゼルスに住む友人の旦那様、篠本拓宏さんがデザインした波佐見焼の器を使っている。鴨川沿いにある店からは眺めもよく開放感があって、春から秋までは季節限定のテラス「納涼床」で風を感じることもできるし、春には反対側の入口前を流れる高瀬川沿いの桜並木も楽しめる。エリアのランドマーク的な存在になれたらいいなという想いとともに、京都での第一歩はスタートしたのだった。