シングルオリジンのコーヒー豆で、
生産者とお客様の体験をつなぐ。

シングルオリジンのコーヒー豆の
品質を守り続けるために。

NOZY COFFEE（ノージーコーヒー）の創業者である能城と知り合い、シングルオリジンのコーヒー専門店を立ち上げたのが2010年。今でこそシングルオリジンを知る人は少しずつ増えていますが、当時は、ブレンドコーヒーもシングルオリジンも、すべて「ブレンド」と呼ばれることが多かった時代。単一農園や栽培品種にフォーカスした、シングルオリジンのコーヒー文化を広めたいと強く思っていました。

今は、THE ROASTERY BY NOZY COFFEEで、NOZY COFFEEのブランドとコーヒー豆の品質を守るのが、私の仕事。焙煎された豆のテイスティングもしますが、メインはコーヒー豆の買い付けです。中米の収穫期は2〜3月で5月頃には品評会、さらに夏には南米が収穫期になるので、例年は年に2〜3回の出張で6ヵ国程度をまわります。現地を訪れて味を確認し、品質が良い豆はもちろん、ちょっと目新しい豆を買ってみることも。そして、継続的な契約をすることも、私たちが大切にしている部分です。それが生産者の安心感やモチベーションにつながり、結果的に味わいにも表れると考えています。

コーヒー豆の契約が、人生を変えた。
そんなエピソードがスタッフの自信に。

中米のホンジュラスという国には、小さい農園がたくさんあります。こういった無名の地域にも高品質の豆があり、私たちは継続的に買っていたんです。あるとき現地を訪れて生産者から話を聞く機会があったのですが、そのエピソードに驚きました。

コーヒー豆の生産では、高品質のものをつくって高値で売らないと商売になりません。かつてはその生産者も生活が苦しく、アメリカに不法入国で出稼ぎに行こうとしたそうです。北上した先のメキシコとアメリカの国境は、麻薬組織がはびこる危険な地域。荒野をさまよい歩いて気を失ってしまった、と。
幸い保護され、ホンジュラスに強制送還されました。ちょうどそのとき、生産者にコーヒー豆が売れたという吉報が入ったのですが、どうやら私たちの契約だったとのこと。それで商売を立て直し、コーヒーの生産を続けたところ、翌年以降は品評会に次々と入賞。コーヒー豆を買うことが、意図せずとも生産者の人生を変えると実感しました。

きっとこういうエピソードが、自分たちが扱うコーヒー豆に対するスタッフの自信になるはず。ロースターの焙煎やバリスタの抽出にも、何かしらの影響を与えるかもしれません。さらに、それがコーヒーを飲むお客様の体験につながっていく。そんなふうに、自分が起こしたアクションがスタッフに伝わり、それがお客様につながるといったイメージを持って、いつも仕事をしています。

朝一番にコーヒーを飲みながら、
自然と生まれる会話を大切に。

スタッフとのコミュニケーションでは、些細なことでも口頭で伝える時間をつくるようにしています。普段のなにげない話のなかで、興味深い話題が出てくることも結構あるので、そういう時間をつくることが大事。私は出社後、コーヒーをいれて、スタッフに配って一緒に飲むのを日課にしています。コーヒー豆のエピソードを話すきっかけになるかもしれないし、スタッフによっては私のいれたコーヒーを分析して抽出の話になるかもしれない。なによりコーヒー屋さんで働いていて、朝一番にコーヒーが出てくるのって、いいですよね。

コーヒーはまだまだ発展途上。例えば、ワインと比べても遅れをとっていて、コーヒーのプロフェッショナルと言われているバリスタも、ソムリエのような賃金を得て生活できているわけでは残念ながらありません。もっともっとコーヒーの価値を上げて、ロースターやバリスタはもちろん、いいコーヒー豆をつくった生産者も報われるような状況をつくっていきたいです。